『安いニッポン「価格」が示す停滞』-書評「私のオススメ書籍」第3回
皆さま、こんにちは。
最近、健康診断でメタボ診断され、ショックを受けている太田尚道税理士事務所 所長の太田尚道です。
今回は、メタボよりショックを受けた書籍をご紹介したいと思います。

沈みゆくニッポン
ハンバーガーから不動産にいたるまで日本にある商品、そして賃金は、世界的な価格で比較すれば安くなってしまっている。
そう。日本人が気づかない間に、日本は「安い国」になってしまったのだ。
しかし、日本にいると、特に生活になんの不便も感じないものだから、そのことに気づきにくい。
本書は他国と日本の商品価格を比べることで、「ニッポン」が置かれている現状に気づかせてくれる一冊なのである。

ビッグマック価格
日本では物価が安定しており、それほどインフレにはなっていない。
つまり、物価に対して日本円の価値はあまり変わっていない。
かたやアメリカではインフレが進み、物価高になり、結果として、物価に対してドルという通貨の価値は下がっている。
上記を考慮すると、本来ならば日本円と米ドルの為替も適正に調整されるべきで、理論上、円に対してドルはドル安にならなければならない。
しかし、現実はそうはなっていないのだ。

かたやアメリカでは$5.71
マクドナルドで販売されているビッグマックを例に挙げて、簡単に説明したい。
仮に現在のドル・円相場を1ドル=110円としよう。
マクドナルドのビッグマックは日本では390円。これは、およそ3.5ドルに相当する。
しかし、実際にアメリカで販売されているビッグマックは5.71ドルで、日本円に換算するとおよそ628円。
つまり、日本ではビッグマックを390円で買うことができるが、アメリカでは628円支払わないと買えない。
同じビッグマックという商品が日米で同じ金額であるとすれば、ドル・円相場は1ドル=68円(※)になるはずだ。
ビッグマックの理論値では1ドル=68円にならなければならないが、現状は1ドル=110円になっている。

このビッグマックの例からも分かるように、実際はドルと比べて円が安く、円安になっているのだ。
だからアメリカ人が日本に来たら、安くお買い物できてしまうというわけだ。
一方、日本人がアメリカに行けば、なんでも高く感じてしまうだろう。
私が住む大阪でも、コロナ禍前には多くの外国人観光客が来日し、ショッピングや観光などを楽しんでいた。
日本がデフレであり、外国から来た人々にとってお得感を感じられることが来日の一つの要因だったのだろう。
※(110円×390円÷628円)
円安の恐怖

何度も言うが、日本円は安くなった。
今後、日本円はさらに安くなり、1ドル=120円時代が到来するかもしれない。
そうなれば、日本円で資産を保有しているということは、世界的にみれば、資産の価値が下がっていることになる。
いつの頃からか、ヨーロッパ製の時計やバッグなどのブランド品の値段が高くなったな~と感じていた。

それはヨーロッパではインフレになっているにもかかわらず、日本円に対して為替レートが調整されていないからだ。
だから、日本人が外国の品物を買おうと思ったら、高くなるわけだ。
本書でも取り上げられていたように、近い将来、高級不動産やマグロなどの高級魚は富裕層の外国人が買い占め、日本人は買えなくなるかもしれない。
日本人は「日本円の価値が下がっている」という事実を認識しなければならない時期に来ている。